「カップ麺業界に“新たな革新”を起こす」――。10月5日、東洋水産が自信を持って世に出す新商品「マルちゃん正麺 カップ」が発売されます。

えん食べ編集部で試食したところ、“生麺のような”のどごしに驚きの声があがりました。ゆでていないのに、どうして「つるん」としたのどごしとなるのでしょうか。今回は、9月30日に実施された新商品発表会で明かされた、開発の裏側に迫ります。

「マルちゃん正麺 カップ」開発の裏側に迫る!
「マルちゃん正麺 カップ」開発の裏側に迫る!

◆「ゆでる」にこだわり

袋麺のマルちゃん正麺が登場したのは2011年。通常は麺を工場で「蒸す」ことでアルファ化(熱によってでんぷんを胃で消化できる状態に変化させること)させるところを、食べる直前にアルファ化が起こるよう設計することで、インスタント麺でも生麺に近い味わいを実現できました。完成した麺は、インスタント麺業界に「マルちゃんショック」といわれるほどの衝撃をもたらします。

しかし、カップ麺と袋麺では家庭での調理方法が異なるため、袋麺の製法をそのまま使用するわけにはいかず、新たな技術の開発が必要でした。インスタント麺では「蒸す」製法がスタンダードななか、やはりゆでた麺が一番おいしい!と、「ゆでる」製法にこだわった麺の開発をゼロから始めたそうです。

◆その名も「生麺ゆでてうまいまま製法」

湯で戻しただけなのに、ずっしりと箸にかかる重み、つるんとしたのどごし。4年かけて開発した独自製法の名は「生麺ゆでてうまいまま製法」。

カップ麺で「ゆでる」工程を取り入れるには、さまざまな課題がありました。そのひとつが、乾燥に時間がかかること。通常インスタント麺では、長期保存できるよう、麺の水分量を約10%まで下げなければならないのに対し、ゆでた麺の水分量は65%程度。これを従来通りに乾燥させると麺が縮んでしまい、湯で戻してもおいしくならなかったそうです。そこで、高度な乾燥技術が開発されることになりました。

◆のどごしは「微粒子」が決め手

乾燥工程では別の問題も。発生した大きな気泡が、食感を悪くしてしまっていたのです。解決するためには、麺に細かい穴(多孔質)を作らなければなりませんでした。

この問題を、マイクロサイズの「微粒子」を配合することで解決。乾燥時に「微粒子」から水分が飛んで細かい穴を作り出し、また「微粒子」自体が水分を含んでいるため熱の通りがよく、短時間で“おいしい麺”に戻すことが可能になったのだとか。加えて、穴に「微粒子」が残るため、麺がのびにくいという効果も。

こうして、カップラーメンとは思えない、のどごしがよくてコシのある“生麺のような麺”が完成したのです。

◆スープと具材は麺を引き立てる

マルちゃん正麺 カップのラインナップは3種類。「芳醇こく醤油」「香味まろ味噌」と、関西以西で販売される「濃厚とろ豚骨」が用意されています。

まず、全フレーバーに共通して、鶏ガラや野菜などを煮込んだ自家製のスープを液体スープに配合。“ラーメン屋さんの寸胴鍋からただようだしの風味”を演出しているのだとか。具材は、「醤油」と「豚骨」には、それぞれに合う部位を選んだという、食べ応えあるチャーシューが。また「味噌」には、フリーズドライにした大きめカットの野菜が入っているといったように、スープにあわせて調整してあります。

カップ麺では、麺だけでなくスープや具材も重要。カップ全体の味わいにも力を入れたそうです。
 
発表会に登壇した、東洋水産 沖常務取締役
発表会に登壇した、東洋水産 沖常務取締役

◆カップ麺業界に“新たな革新”を

初のカップ麺「カップヌードル」が誕生したのは1971年。お湯を注ぐだけという手軽さは人々の心をつかみ、生活になじんでいきました。1976年にはカップ入りノンフライ麺が登場し、その後も少しずつリニューアルしておいしくなってはいたものの、革新的な変化はなかったといいます。同社が発売前に実施したアンケートでも、回答者の約80%がカップ麺の現状にマンネリ感があると回答したそうです。

そんなカップ麺業界に「新たな革新を起こす」と、同社の沖常務取締役は話します。商品のできばえは、「目隠しで食べると生麺かなと思ってしまうほどの品質」と自信満々。“生麺のような麺”が味わえるマルちゃん正麺 カップが、カップ麺業界を大きく揺さぶりそうです。まずは10月5日、自分の舌で確かめてみて!

情報提供:東洋水産