3年、5年と長期間保存できる非常食(防災食・保存食)。買ったことに満足してつい存在を忘れてしまいがちです。「気づかないうちに期限切れとなり処分してしまった」なんて経験がある方も多いのでは?

そうならないためにも、日常生活の中に非常食を取り入れる必要がある言われています。とはいえ、それだけで食べるには味気ないものもたくさん。おいしく食べる方法はないのでしょうか。


そこで、普段の食事にも取り入れられる非常食のアレンジテクニックを学ぶべく、非常食を“ごちそう”にリメイクした「“ごちぼう”ランチ」を体験してきました。乾パンやアルファ米など、定番の非常食も絶品メニューに変身します!

「非常食」をおいしく食べたい!
「非常食」をおいしく食べたい!

“ごちぼう”とは、シェフの手で“ごちそう”に変身した非常食を食べることで、楽しみながら防災について考える取り組み「ごちそうとぼうさい」のこと。千葉県松戸市で開催されたイベントでは、地元で大人気のフレンチレストランのオーナーシェフ・田島さんと、“ごちぼう”の料理全般を担当するキムラシェフの2名が腕をふるいました。

変身させた非常食は、乾パン、アルファ米、乾燥餅、チキンロースト、そしてバータイプの栄養補助食品(カロリーメイトなど)です。これらが、ちょっとしたひと手間で一流レストランに並んでいても不思議でないような“ごちそう”に生まれ変わります。

1.乾パンが気軽につまめる一品に

どこに乾パンが使われているか分かりますか?
どこに乾パンが使われているか分かりますか?

乾パンは非常食の定番だけど、あまり人気はありません。固くて口の中の水分は奪われるし、味気なく感じてしまうことなどが原因でしょうか。その乾パンが、牛乳にひたすだけで絶品食材に変身するのです。

牛乳でふやかした乾パンに野菜とチーズをのせて焼くと、パーティーメニューみたいにオシャレな一品が出来上がりました!食べにくい乾パンがモチモチに変わっており、「説明されるまで何で作ってあるのか分からなかった」という参加者もちらほら。柔らかくした乾パンは、噛む力が弱い乳幼児やお年寄りにもオススメです。

2.好みのソースで!乾燥餅のミルフィーユ

中央にあるクマ型ニンジンがのっている料理が、乾燥餅のミルフィーユ
中央にあるクマ型ニンジンがのっている料理が、乾燥餅のミルフィーユ

乾燥餅は、早いものだと水を注いでから5~10秒ほどで柔らかくなります。それと野菜をミルフィーユみたいに重ねて、6種のソースをつけて頂きました。自分の好きなドレッシングや調味料でも OK。ゆでた野菜、焼いた野菜、生の野菜と、味付けに合わせて調理方法を変えてもよさそうです。

3.アルファ米をあったかメニューに

アルファ米は鍋に入れてしまいます
アルファ米は鍋に入れてしまいます

アルファ米は、お湯や水を入れて放置するだけで食べられる米飯です。五目ごはん、カレー、ピラフなど、味付きのものも販売されています。今回は、味がついていないものを、野菜たっぷりのチャウダースープに入れました。クリーミーなスープにアルファ米がよくなじんでいます。温かさにホッと一息。

従来よりおいしくなったと言われるアルファ米ですが、やはり炊いた白米と比べると違和感があります。スープに入れることで違和感も薄まるうえ、粒々とした食感がアクセントに。特に、そのままのアルファ米が苦手だという人にはオススメのアレンジ方法です。

4.チキンは食卓の主役

非常食には“惣菜系”もあります
非常食には“惣菜系”もあります

非常食といえば炭水化物ばかりというイメージですが、“惣菜系”も販売されています。今回使ったチキンローストは、あらかじめ加熱と味付けをを施してあるので、開封してすぐに食べられるものです。キムラシェフは、このチキンにスパイスなどをかけてローストし、野菜のトマト煮込みの上にトッピング。食卓の主役となる一品が完成しました。

チキンはパサパサとしているため好みは分かれそう。例えるなら、炒めて水分を飛ばしたツナ缶といったところでしょうか。しかし、再びローストしてあるおかげかあまり気にならず、濃い目の味付けも絶妙な仕上がり。ビールが飲みたくなります。

好きな野菜をトマト煮込みに。ここにチキンをのせるだけ
好きな野菜をトマト煮込みに。ここにチキンをのせるだけ

5.デザートだって非常食で

非常食が大人のスイーツに大変身!
非常食が大人のスイーツに大変身!

デザートも非常食で。バータイプの栄養補助食品が、ティラミスに変身しました。作り方は、クリームチーズ、砂糖、生クリームを混ぜたクリームと、コーヒーにひたしたバーを組み合わせるだけ。バーはしっとりしたスポンジみたいなものに変身していて、クリームと一緒に食べると、口のなかでティラミスが完成!濃いめのコーヒーにつけるのがポイントです。

どれも非常食とは思えないほどおいしくて、つい食べ過ぎてしまいました。わざわざ非常食を買って作りたいくらい!シェフのレシピとはいえ、一般家庭でも簡単に実践できる作り方ばかりなので、ぜひそれぞれの舌にあった味にアレンジしてみて。非常時に役立つアイデアもたくさんつまっていますよ。

食べ慣れた「家庭の味」にアレンジしてみて
食べ慣れた「家庭の味」にアレンジしてみて

近年、新たな備蓄法「ローリングストック法」も広まってきました。定められた期限まで備蓄しておくのではなく、非常食を普段の食事に取り入れて食べた分だけ買い足すという、「食べながら備える」方法です。アレンジレシピのバリエーションをどんどん増やして、おいしく食べてしまいましょう!

阪神・淡路大震災から20年。非常食に関する考え方も、非常食そのものも大きく変化しました。冷蔵庫には何が入っていますか?棚の奥に忘れ去られた食材はありませんか?まずは、家の中にあるものを確認してみましょう。思わぬ”ごちそう”の種が見つかるかもしれません。