何かと話題になるワタミグループ。その主力居酒屋ブランド『和民』がリニューアルされる。メニューやサービスの質を向上させ、来店頻度の高い40代を中心とする“大人”をターゲットにするようだ。

和民が“大人の居酒屋”にリニューアルするようだ
和民が“大人の居酒屋”にリニューアルするようだ

和民といえば、「ほかに店がないときに利用する」「メニュー内容の割に値段が高い」といったように、マイナスイメージの声を聞くことも多い。ワタミグループが実施した調査でも、「もっともよく利用する居酒屋チェーン」では大差をつけて1位だったのに、「もっとも美味しい」「もっとも質が良い」居酒屋チェーンでは、他店との差がほとんど見られなかったそう。


「これまでも素材や味にこだわったメニューを提供してきたが、(お客には)伝わっていなかったようだ」(和民営業本部本部長)と、メニューやサービスを全面的に見直し、“大人が普段使いできる居酒屋”へとリニューアルすることになったそうだ。コンセプトは“居酒屋の意地”。これまで以上に素材や手作りにこだわると同時に、品数を厳選して「記憶に残る味」を目指したという。

新メニューは、すでに都内の3店舗(青物横丁店、新宿東口靖国通り店、阿佐ヶ谷店)で試験的に導入されている。今回は、これらの中から同店オススメのメニューを食べてみた。

特に好評だという「山手の肉豆腐」(630円)は、居酒屋チェーンではあまり使われない実山椒を加えて、あっさりと仕上げられている。出来立てが鍋で提供されるのも嬉しいメニューだ。人気があるのも納得の味わい。

いちばん人気の「肉豆腐」
いちばん人気の「肉豆腐」

数量限定の「葱だく牛フィレステーキ」(1,000円)は、厚切りで柔らかい。少し値は張るが、相応の満足感は得られる。また「活〆鮮魚産品盛合せ」(1,200円)には、全国の60の漁港と提携し、船の上でしめられた“活〆“の魚だけを使っているという。活〆にすることで鮮度と味がよくなるそうだ。これまで居酒屋チェーンの刺身には箸が進まなかったという人も、試してみるといいかもしれない。

柔らかい肉厚ステーキ
柔らかい肉厚ステーキ

野菜は、有機栽培を前面に押し出している。女性に大人気だという「つぶ貝と帆立の熱々サラダ」(690円)は、テーブルで蒸しあげた熱々の有機野菜を楽しむ一品。ガーリックバターとポン酢で、コクがありながらもさっぱりと食べられる。また野菜を使ったカクテル「レッド リボン」「キャキャロット」も登場する。これらにも、自社農場で栽培した有機野菜が使われているそうだ。

ポン酢でさっぱりと食べられる“温サラダ”
ポン酢でさっぱりと食べられる“温サラダ”

主食メニューを見てみると、個性ある麺類が目に入る。

「濃厚海老味噌ラーメン」(590円)は、開発担当者が何軒もものラーメン店を食べ歩いた中で印象に残ったという味わいをもとに作られたそう。海老の風味たっぷりで甘めに仕上げられているが、付属の辛味噌を加えることでピリッと味が引き締まり、シメにピッタリの味に。やみつきになる…とまでは言えないが、あまりお目にかかれない味なので、試してみてほしい。

2.2mm の極太麺を使った「大人なのわがままナポリタン」(590円)は、ケチャップベースの深みのあるソースにもちもちの太麺が絡み合う。担当者も「銀座の名店に勝ったと自負している」と自信を見せるメニューだ。ブロックチーズもかけ放題で、お得な一品といえるだろう。

極太麺+チーズかけ放題のナポリタン。これ一品で満足の味わい
極太麺+チーズかけ放題のナポリタン。これ一品で満足の味わい

デザートメニューは品数を維持。女性目線を意識して、カラフルな商品がラインナップされている。「北海道小豆と白玉ぜんざい 紫芋ココナッツスープ」は、やさしい甘さのぜんざい。自家製の「バニラアイス」や「有機チーズケーキ」など、北海道の素材にこだわったスイーツも用意されている。

華やかな紫色のぜんざいは、あっさりした仕上がり
華やかな紫色のぜんざいは、あっさりした仕上がり

さらに、「九平次」「作」といった居酒屋チェーンでは珍しい日本酒、全国各地の焼酎など、ドリンクメニューのラインナップも強化されている。酒の種類に不満があった人には朗報かもしれない。

ひととおりのメニューを食べてみたが、全体的に、これまでよりも丁寧にに調理されているように感じた。サービスの質も改善されるのならば、和民のイメージは良くなるのかもしれない。ただし、味や質とともに価格帯も上昇している。「手頃な居酒屋」として利用していた層にとっては、少し厳しいリニューアルとなりそうだ。この新メニューは、2014年3月18日には全店舗へ導入される予定。

アベノミクスの効果か、外食にお金を使う人は増えているものの、人気が出ているのは専門店やレストラン。コンビニや小売店の“中食”との競争も激化し、居酒屋の利益は前年割れが続いているという。今回のリニューアルで「居酒屋業界全体を盛り上げていきたい」とするワタミグループだが、客足は戻るのだろうか。

※価格はすべて税別