江戸の人口は100万人。でもその男女比率は、男性3人に対して女性1人程度だったと言われています(注:男女比率は時期によって異なります)。このため、江戸の町では男性が1人で食事をとる光景は珍しいものではなく、むしろ独身男性向けに、寿司、蕎麦、てんぷら、焼き鳥などを提供する屋台や店舗が発達しました。この流れは今日まで続いており、現在の東京には、女性向けのお一人様レストランまで存在しています。

でも、欧米には、お一人様向けのレストランというものは(ほぼ)存在していません。もちろん国によって事情は異なるのですが、基本的にはレストランはカップルで訪れるもの。特に一部の国における"カップル圧力"は相当に強く、週末に晩御飯を食べる相手がいない独身者は、かなりみじめな思いを味わうことになります。


そんな状況の中、オランダの広告会社 Vandejong とデザインスタジオ Marina van Goor は先月、実験的なコンセプトを持ったレストラン「Eenmaal」をオープンしました。

"世界初のお一人様専用レストラン"を謳うレストラン「Eenmaal」
"世界初のお一人様専用レストラン"を謳うレストラン「Eenmaal」

「Eenmaal」は、"世界初のお一人様専用レストラン"を謳ったお店。"人前で1人で食事をするのはタブー"であるという欧米社会における常識を打ち破るだけでなく、それをより魅力的なものに変え、現代社会における当然の行為にすることを目指しています。

「Eenmaal」では、1人で入店しても気兼ねなく座れるよう、テーブルはお一人様サイズのものだけが置かれています。しかもテーブルの配置は、お客さん同士が視線を合わさなくても済むよう工夫されているのです。

「Eenmaal」のテーブルはお一人様サイズ  カップルでは座れません!
「Eenmaal」のテーブルはお一人様サイズ
カップルでは座れません!


テーブル配置は、お客さん同士が視線を合わさなくても済むよう工夫されています
テーブル配置は、お客さん同士が視線を合わさなくても済むよう工夫されています

欧米のヤングアダルト小説などでは、週末に晩御飯を食べる相手がいないことから、ルームメイトにいじめられる人物が主人公として登場することもしばしば。そしてこの手の小説では、主人公がデート相手を獲得し、いじめていたルームメイトが失恋することでハッピーエンドを迎えることがほとんどです。

晩御飯を食べる相手がいないだけでいじめられる社会が正しいのかどうかはわかりませんが、一方で、"カップルでなければ外食もできない"という社会の仕組みが、実は少子化防止に役立っているという説があるのも事実です。

オランダの合計特殊出生率は、1.79。決して高いとは言えないのですが、日本の1.39 よりは高めです。「Eenmaal」のようなお一人様向けのレストランの登場がオランダの出生率を下げてしまうのか、それとも影響はでないのか、とても興味深いところです。

「Eenmaal」で提供されるメニューの一例
「Eenmaal」で提供されるメニューの一例

おいしそうですね!
おいしそうですね!