「風邪をひいたら桃缶」

これは、ある年代より上の人間であれば、誰もが経験してきたことだろう。今でこそ、安いものなら1缶105円で買えてしまう桃缶。でも、当時はまだまだ高級品だった。

「Journal of the Science of Food and Agriculture」に掲載された最新の研究「Nutritional content of fresh and canned peaches(フレッシュな桃と缶詰の桃の栄養素含有量)」によれば、桃缶の桃の栄養価は、フレッシュな桃と同じか、場合によってはより高いのだという。米国の公共ラジオ局 NPR が伝えている。


同メディアが伝えたところによれば、缶詰の桃のビタミン C 含有量は、フレッシュな桃よりも4倍も多いのだという。ビタミン E の含有量は、両者ともほぼ同じ。だが、葉酸の含有量は、缶詰の桃の方がフレッシュなものよりも多いそうだ。

普通に考えれば、フレッシュな桃の方が栄養価が高そうに思える。なのに、なぜ缶詰の桃の方が栄養価が高いといった不思議な現象が起きるのだろうか? カリフォルニア大学デービス校の Christine M. Bruhn 博士は次のように説明している。

「缶詰処理中にフルーツの果肉の細胞壁が破壊され、例えばビタミン A などの栄養素が体内に吸収されやすくなるためだ」

Bruhn 博士は、これはフレッシュなトマトよりも、トマトソースの方がリコピンのレベルが高くなるのと同じ理由だとしている。

もちろん、缶詰にすることで失われる栄養素もある。また缶詰の種類によっても、栄養素の含有量は異なっている。だが少なくとも、ビタミン C の含有量は、フレッシュなものより缶詰の桃の方が多いそうだ。

「風邪をひいたら桃缶」。

この、昔ながらの対処法は、あながち間違ってはいなかったようだ。