獲れたての“新麦(しんむぎ)”で作ったパンを楽しむイベント、「新麦パーティ」が10月17日に東京・代官山ログロード内で開催されました。会場はメインとなるイベントスペースに加え、パンの販売スペース2か所の計3か所。

イベントスペースでは、全国8つの地域から集った小麦生産者とパン職人のチームが、“新麦”のパンをふるまいながらパンへの想いを語ります。参加者は、生産者の話を聞くと同時にパンを味わえるしくみ。またこの日ふるまわれるパンは、この日だけのレシピで作られたものなのだとか。


生産者のパンや小麦への思いを聞きながら、
生産者のパンや小麦への思いを聞きながら、

その日限りの新麦パンを
その日限りの新麦パンを

また販売スペースには、全国約20のパン店から集まった新麦のパンが並びます。普段は入手の難しいパンを求める人で、絶えず行列ができていました。

パンの販売スペース
パンの販売スペース

全国から集まった“新麦”のパン
全国から集まった“新麦”のパン

絶えず行列ができていました
絶えず行列ができていました

えん食べ編集部でも、気になったパンを購入したのでご紹介します。

◆「オリーブとトマト」リュミエール・ドゥ・ベー(神奈川) 280円

オリーブとトマトに加え、バジルやローズマリーなどのハーブが練り込まれたパン。小麦品種「はるゆたか」の新麦を100%使用。

ハーブも練り込まれた「オリーブとトマト」
ハーブも練り込まれた「オリーブとトマト」

「はるゆたか」の新麦使用
「はるゆたか」の新麦使用

噛むごとにオリーブの果肉からまろやかな塩味と旨み、生地からトマトとハーブの風味があふれ出ます。もっちりしっとりとした食感の生地に加え、ごろっと入ったオリーブの果肉により、ジューシーともいえる味わい。

オリーブがごろごろ!赤紫色で栗みたい?
オリーブがごろごろ!赤紫色で栗みたい?

◆「フリュイ」チクテベーカリー(東京) 420円

ドライフルーツとナッツがみっしりと詰まった、バトン型のパン。ライ麦と全粒粉使用。


カリッとしたナッツの食感、ドライフルーツからしみだす甘み、生地の香ばしさや酸味が、ひと噛みごとにランダムに襲来。それらが徐々に、ひとつの深みのある味わいにまとまります。具材たっぷりながら生地の味は霞まず、麦と具材の味のバランスが考え抜かれた一品。


◆「ライ麦パン」ソーケシュ製パン(北海道) 330円

どっしりとした貫録のあるライ麦パン。新麦40%配合。

新麦配合のライ麦パン
新麦配合のライ麦パン

手書きのプライスも良い雰囲気
手書きのプライスも良い雰囲気

香ばしい風味に、もちもちとした食感。噛むごとに酸味と旨みが深まります。それでいて口どけはスッと繊細で、まるでそのまま体内に溶け込んでいくよう。


◆「朝と昼のバゲット」TORO PAN TOKYO(東京) 250円

新麦を100%使用した、ミニサイズのバゲット。

新麦100%使用「朝と昼のバゲット」
新麦100%使用「朝と昼のバゲット」

「朝の光があるうちに。夜への期待。」
「朝の光があるうちに。夜への期待。」

ぱりぱりと香ばしい皮は厚みがあり、生地は目が詰まって食べ応えあり。噛みしめるたび、細かなキメのひとつひとつから小麦の香りが立ち上り、ほんのりとした小麦の甘みが広がります。

キメ細かく密な生地
キメ細かく密な生地

◆参「テーラ・テール」250円(愛知)

数字の「3」を模したユニークな形のパンは、ビターなチョコと栗入り。新麦40%配合。

「3」の形のパン
「3」の形のパン

細くても中身はもっちりやわらか。カリッとした皮とのコントラストが鮮やかです。チョコの存在感が強すぎず、栗のホクホクとした食感とコクのある甘み、生地からしみ出る小麦の甘みとバランスよく調和しています。

もっちりとした生地にチョコと栗入り
もっちりとした生地にチョコと栗入り

どれも小麦の旨みや甘みがはっきりと感じられるものばかり。シンプルなものはそのままで完結するおいしさ、具材の入ったものは生地とのバランスの良さが味わえました。

◆新麦パーティのアイデアはどこから?

“新米”や“新そば”にはなじみがありますが、新麦のパンとなると聞きなれません。なぜでしょう?イベントの開催理由と合わせ、主催者の池田さんに尋ねてみました。

えん食べ:新麦パーティを開催した理由やきっかけなどあれば、お聞かせください。

池田さん:「大きく分けてふたつあります。ひとつは新麦のパンがおいしいことを人々に知ってもらうため。もうひとつは、ふだん顔を合わせる機会のない小麦生産者(農家)と消費者を引きあわせるためです。生産者にとってはよりおいしく安全な小麦を作るモチベーションに繋がり、消費者にとっては安心に繋がると考えました」

小麦生産者やパン職人に質問する参加者
小麦生産者やパン職人に質問する参加者

えん食べ:新麦のパンが世に広まっていないのは、なぜなのでしょう?

池田さん:「獲れたての小麦は質が安定せず、パンが作りにくいからです。そのため、熟成させてから挽き、パンを作るのが常識となっていました。しかし新麦でも手をかければ、風味が強く美味しいパンが作れます。挽きたてのそば粉で作る新そばがおいしいのと一緒ですね」

えん食べ:なるほど。こうして美味しいことが広まっていけば、新麦のパンを作るお店も増えるかもしれませんね。お話、ありがとうございました。

新麦をおいしいパンにするのは技術がいる
新麦をおいしいパンにするのは技術がいる

朝食を中心に、すっかり日本にも食文化として根付いたパン。しかし、とくにわたしたち消費者にとっては、まだまだ知らない面もあるようです。パンを知り、作り手とわかりあうことで、よりおいしいパンが生まれていく。そんな素敵な循環を生み出すイベント、新麦パーティでした。

また来年、新麦の季節に…
また来年、新麦の季節に…