北海道は余市町。NHKの連続テレビ小説で一躍有名になった、あのウイスキー蒸留所がある町だ。ここに「Jijiya Babaya(ジジヤババヤ)」というイタリアンレストランがある。実は名の通ったイタリアンで、なかには遠方から足を運ぶ人もいるという。たまたま訪れたのだが、あまりにおいしかったので店主にお願いし、掲載の許可をいただけたのでご紹介したい。

北海道・余市の絶品イタリアン「ジジヤババヤ」
北海道・余市の絶品イタリアン「ジジヤババヤ」

◆ 偶然の出会い


もともとは、蒸留所見学を終えたら小樽で昼食をとろうと、小樽在住の知人におすすめの「すし屋」を尋ねていた。すると当日の朝になって、なぜかおすすめの「おでん屋」の情報が送られて来たのだ。3軒分。しかもすべて夜営業のみ。教えてもらっておいてアレだが、「なんでやねん!」とツッコミの嵐である。(ちなみに夜、おでん屋のうちの1軒にお邪魔した。常連さんが温かくておでんもとてもおいしかった。)

出鼻をくじかれたものの、余市で食べるのも良いかもしれないと思い直し、余市駅に置いてあった小さな観光パンフレットを手にとった。そこにジジヤババヤが掲載されていたのだ。ユニークな店名に惹かれ、行ってみることにした。

◆ 酔っ払いにはご用心

蒸留所を出て、国道229号線沿いを町役場方面へ向かう。ジジヤババヤまでは1kmほど。2月上旬、うっすらと氷の張った余市川を横目に、歩きなれない雪道を進む。

ここで、同じルートをたどろうとする方のために蛇足を承知で記載しておくと、蒸留所見学ではウイスキーの試飲ができる。有料試飲コーナーもある。つまり、この時点で程度の差はあれど“酔っ払い”だ。足元がおぼつかない、なんてことはないだろうが、雪道に慣れていない人は、無理をせずタクシーのを利用をおすすめする。

うっすら氷が張った余市川。  ちょうど天気も悪く、見るからに寒い
うっすら氷が張った余市川。
ちょうど天気も悪く、見るからに寒い

もうお店はすぐそこ。雲が晴れても見た目が寒い
もうお店はすぐそこ。雲が晴れても見た目が寒い

雪原のなか突如現れるスタイリッシュな建物がジジヤババヤだ。壁から伸びるイタリア国旗がよく目立つ。店内は、ゆったり座れるカウンター席と、いくつかのテーブル席。ちょうど開店と同時くらいに入店したためか、一番乗りだったようだ。

旗が良く目立つため分かりやすい
旗が良く目立つため分かりやすい

◆ 名物は“ヘラガニのパスタ”

さっそくメニューを眺める。メインは15種以上あるパスタやピッツァ。単品として軽いおつまみ、デザート、そしてワインなどアルコールも用意されている。

休日用のランチメニュー
休日用のランチメニュー

筆者は一番人気だという「ヘラガニトマトクリームパスタ」を注文した。同店の看板メニューでもあるらしい。

外に置いてある看板にものっている
外に置いてある看板にものっている

クリームソースをあえたパスタの上に、丸ごと1匹カニがのっている。写真を裏切らない、いや、写真以上にインパクトがある一品。気迫すら感じられる。

今にも動き出しそう
今にも動き出しそう

皿いっぱいの、カニ
皿いっぱいの、カニ

ヘラガニの正式名称は「ヒラツメガニ」。日本各地で水揚げされる小型のワタリガニらしい。地域によって、ヒラガニ、アカガニ、シラガニなどの呼び名もあるようだ。都市部へはあまり流通せず、とれたてをみそ汁にして食べるらしい。

調理前のカニを見せていただいた  写真では分からないが動いている
調理前のカニを見せていただいた
写真では分からないが動いている

美しい紫色
美しい紫色

店主によると、脚が細く、肩肉(脚の付け根)の部分くらいしか食べられる身はないのだとか。殻がとても柔らかいので、脚を手で持ってガブリとかぶりつき、身をすすりながら食べるらしい。確かに身はほとんどなかった。だが、さっぱりとした中にもコクがあり、じゅっとすするとしっかりと旨みを感じられる。

カニの下のパスタにはこの旨みが凝縮されている。みそや身を混ぜてあるのだろうか、トマトソースがとてつもなくうまい。ぽってりと濃く、だがとがったものはなく、すべてが絶妙なバランスで成り立っている。体の中をおいしい香りで満たしてくれるパスタだ。

◆「ドメーヌ タカヒコ」に恋焦がれる人々

ここには、もうひとつ“名物”がある。すぐ近くにある小さな醸造所「ドメーヌ タカヒコ」のワインだ。実はこれを飲むために全国からワイン好きが足を運ぶという。

ドメーヌ タカヒコでは、自家農園でビオ栽培したピノ・ノワールを使い、酵母を加えずに自然に発酵させるワインづくりを行なっている。“農夫でなければ造れない、そんな自然なワイン造り”を目指しているそう。味の評価も高く、新進気鋭の日本のワイナリーとして注目されている。

生産できる量が少ないこともあり、取り扱い店も少ない。だがジジヤババヤに来ると、この珍しいワインを飲めるうえ、おいしい料理だって食べられる。実際この日も、これから醸造所を見せてもらいに行くという人が来店していた。ワイン好きにとって願ってもないレストランなのかもしれない。

筆者は「Koharu(コハル)」という赤ワインをいただいた。さわやかなブドウの果実味が印象的だった。

本日のワインはボードで確認を  ワイン情報はブログでも更新されている
本日のワインはボードで確認を
ワイン情報はブログでも更新されている

◆ ブドウのピクルス?

Koharuにも合うよ、と教えてもらったメニューがある。絶妙な甘みと酸味のバランスに仕上げられた「自家製ピクルス」。なんと、ブドウのピクルスが入っている。プチっとはじける瑞々しいピクルスは新感覚。繊細なKoharuとマッチしていて、センスの良さを感じる味わいだった。

手前の小皿にブドウのピクルスがのっている
手前の小皿にブドウのピクルスがのっている

12時半頃になると、客席は8割ほど埋まっていた。遠方から訪れた人もいれば、地元の人らしき家族連れもいる。幅広い人に支持されているレストランなのだろう。

このあと小樽へ寄り道して札幌に戻り、ある店でジジヤババヤの名前を出すと、札幌生まれ札幌育ちのスタッフは知っていると言っていた。北海道では名の知れた名店なのだろうか。とにかく素晴らしいひとときを過ごさせてくれたお店の皆さんに、感謝の一言である。次回訪れることがあれば、ぜひともピッツァ×ワインを楽しみたい。
Jijiya Babaya(ジジヤババヤ)
住所:北海道余市町朝日町15-1