コーヒーの起源のひとつに、9世紀のエチオピアを舞台としたものがあります。山腹の木に実る“赤い実”を食べたヤギが興奮して飛び跳ねるの見て、人間の眠気覚ましとしても使用されるようになったそう。このお話を聞いたとき、「その赤い実を、食べたい!」と思った人と、「ヤギって、山に上れるんだ?」と驚いた人は、どちらも案外多いのではないでしょうか?
赤い実を食べる“気分”を味わえるコーヒーショップが、渋谷区富ヶ谷にある「FUGLEN TOKYO(フグレン・トウキョウ)」。そこで出てくるコーヒーは赤い色をしており、コーヒーとは思えないほどフレッシュなんだとか。今日はヤギの気分で、「フグレン・トウキョウ」に出かけてみましょう。
■フグレン・トウキョウはどこにあるの?
「フグレン・トウキョウ」があるのはNHKスタジオパークや、国立代々木競技場、代々木公園などの近郊。地方の人は恐らく立ち寄ったことがない場所でしょう。でもそこに、ニューヨークタイムズが「飛行機に乗っても飲みに行く価値がある」と評し、実際に海外からの観光客がたくさん立ち寄る「フグレン・トウキョウ」はあります。
代々木公園の緑を楽しみながら井の頭通りを進み、一本入ると白を基調としたシンプルながらも温かみのある外観が見えてきます。お店の外には、日本の縁側のような造りのイスとテーブルがあり、初めて訪れたにも関わらずノスタルジーを感じます。
■赤い実、飲んでみた
◆コーヒーなのにフレッシュ!?
フグレン・トウキョウの代名詞であるエアロプレス・コーヒーを頂くことに。出てきた瞬間、コーヒーの色が暗いルビーのような色であることに驚かされます。照明が落とされたバーで、グラスに入って出てきたら紅茶や赤ワインと見間違ってしまうかもしれません。
爽やかな甘みと酸味が広がり、まるでフレーバーティーを飲んでいるような感覚。コーヒーが“果実”の種子からできていることを感じられる瑞々しい味です。フルティーな後味を残しつつも、サラッと喉元を過ぎていくので、どんどん飲んでしまいそう。
◆どうしてこんなにフルティーなの?
フグレン・トウキョウのコーヒーはどうしてフルティーで爽やかなのでしょうか。筆者は、使用しているコーヒー豆が他とは違うのではないかと推測しました。豆の他に、煎り方にも特徴がありそうです。コーヒーの秘密をバリスタの力武さんに教えていただきました。
えん食べ:コーヒー豆はどのようなものを使っているのですか?
力武さん:「豆はケニア産やエチオピア産のものなどがあります。オスロの本店は、高品質の豆を見つけるのが上手なんです。シーズンや産地によって、その時に1番おいしい豆を使っているので、年間を通して扱う定番のものはないんですよ」
その時々に合わせて、最高の状態の豆を使っているから、爽やかな“コーヒー豆の味”を楽しめるんですね。
えん食べ:豆の煎り方に特徴はありますか?
力武さん:「豆本来のフルーティーな味を壊してしまわないように浅煎りしています。深煎りすると、どうしても苦みやローストした味が出てしまうんです。以前はオスロから豆を空輸していたのですが、運んでいる間に味が変わってしまうことがまれにありました。一昨年の夏から店の近くで自家焙煎をするようになり、品質を一定させて最高のコーヒーを提供できるようになりました」
自前の焙煎所で浅煎りすることで、豆本来の味を活かした高品質のコーヒーを提供できるようです。
◆エアロプレスの魅力って?
豆や煎り方に関するこだわりを教えていただきましたが、どうやらフグレン・トウキョウのおいしさの秘密はそれだけではないようです。フグレンではエアロプレスという器具を使って淹れるコーヒーがあります。エアロプレスで淹れる魅力を伺いました。
力武さん:「エアロプレスは、空気圧で豆のエキスを絞り出して、そのエキスをお湯に溶け込ませていくような仕組みなんです。豆それぞれの持ち味がはっきりと出てくるところが魅力ですね。高品質の豆を使っているからこそ、エアロプレスで淹れるとよりおいしさを感じられるんです」
品質の良い豆を使って、その豆本来の味を感じられるように浅く煎ること。そして、豆の持ち味を最も活かせるエアロプレスによる抽出が、一般的なコーヒーとは違う、フレッシュな「フグレン・トウキョウ」の味を作り出す秘密のようです。
お客さんは外国の方も多く、中にはノルウェーの方もいるのだとか。本国の人をも納得させるフグレン・トウキョウのコーヒーは1度飲むとやみつきになってしまうかもしれません。
■ノルウェーのパンやスイーツも
お店では、ノルウェーコーヒーにあうスイーツやパンも販売されています。これらはベイクショップというお店から仕入れているそう。クリームパンのような見た目のスコーレブローなど、コーヒーと合わせてノルウェーの食文化を楽しんでみるのもおすすめです。
■インテリアもおしゃれ
フグレン・トウキョウの店舗は、ノルウェーのおばあちゃん家がコンセプトだとか。1950~60年代のヴィンテージ家具も多く、日本人でもなぜだかホッとするような落ち着いたインテリアになっています。店内の家具や雑貨は購入も可能。インテリア好きの人も楽しめるお店です。
■赤い実を飲みにフグレンへ
「フグレン・トウキョウ」は、ちょっとアクセスしにくい場所にあります。でも、海外からわざわざ飛行機でやってくることと比べれば、日本にいる我々はずっと恵まれているはず。むしろ、日本にいるのに行かないなんて、もったない?北欧デザインの店内で、これまでの常識を覆すようなフルーティーなコーヒーを飲むことができます。ノルウェーへのプチトリップ気分で一度訪れてみても良いのではないでしょうか。