「フォーチュンクッキー」とは、中におみくじの入ったお菓子。でも、これほどひどい扱いを受けている食べ物は他にないかもしれない。

中華レストランでお馴染みの「フォーチュンクッキー」  ちらりと見えている紙が「おみくじ」
中華レストランでお馴染みの「フォーチュンクッキー」
ちらりと見えている紙が「おみくじ」

米国の中華レストランで食事をとったとき、請求書と一緒にトレーに載せられて登場するのが「フォーチュンクッキー」だ。だが、クッキーは包装されず、裸のまま請求書の上に載せられているので、あまり衛生的とはいえない。このため、クッキーを食べる人はそれほど多くはなく、2つに割られ、中のおみくじを取り出された後は、捨てられてしまうこともある。そう、フォーチュンクッキーは「おみくじの入れ物」扱いされているのだ。

かといって「おみくじ」を楽しみにしている人も多くはない。おみくじの文言を書いたり、翻訳したりしているのは、英語があまり得意ではない人たち。このため、おみくじのメッセージは、何度読んでもさっぱり意味がわからないものが多いのだ。

さて、このフォーチュンクッキー、米国人はみな中国の習慣だと信じている。だが実は、日本に起源をもつものだ。

New York Times によれば、フォーチュンクッキーの原型となったお菓子を日本から米国に持ち込んだのは、日系移民の萩原眞さん。その後、クッキーは日系人の手で全米各地へ広まっていったという。だが第二次世界大戦中に日系人は収容所に送られてしまい、この間に、フォーチュンクッキーの生産設備は中国系移民の手に渡ってしまったようだ。

原型となった日本のお菓子(左)と、フォーチュンクッキー(右)
原型となった日本のお菓子(左)と、フォーチュンクッキー(右)

現在では、フォーチュンクッキーは米国の他、カナダ、メキシコ、ブラジル、英国、オーストラリアなど、ほぼ世界中の中華レストランに広まっている。フォーチュンクッキーがまだ広まっていないのは、中国本土のレストランくらいだ。

クッキーとしてもおみくじとしてもいま一つ虐げられている「フォーチュンクッキー」。だが、請求書のトレーに載っていないと、寂しい気分になるのも事実だ。また、まれにではあるが、意味がわかり、しかもためになるおみくじが入っていることもある。そんな日は、ちょっとだけ良い気分で過ごせるから不思議だ。